『殺生』
仏教では生き物を殺すのをいさめているが、
これは実に不都合なものだな。
天地は死物じゃないし、万物も死物じゃない。
このように生きた世界に生まれて、
一切殺してはいけないということになったら、
人間はどうして生きていくことができるんだ。
生きていけるのは生き物を食べているからなんだ。
死んだものを食べるだけでどうして生きていけよう。
人はみな、鳥、獣、虫、魚などを
殺すことを殺生というが、
草木、果物、穀物を殺すのも殺生と
なることを知らないんだ。
動いたり飛んだりする動物だけを
生きているといって、
草木や穀物のような植物は
生き物ではないとでもいうのだろうか。
鳥獣を殺すことだけを殺生といい、
穀物を煮ることは殺生じゃないというんか。
菜食の修行者といえども、
秋山の落ち葉だけを食べて生きれるもんかね。
だから仏教では殺生戒というが、
ただ自分と類の近いものを戒めて、
類を異にするものを禁じないというのも
不都合なものだ。
つまり、
殺生戒ではなくて殺類戒とでもいうべきだな。
人道というのは人間に都合よく立てたものだな。
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